「skyに似た色」V-110について

リサーチャーのSさんから私の雑想ノート「零戦灰緑色考察その1」にある記述に関してこのようなご質問をいただきました。以下アップデイトを兼ねてSさんへのお答えを掲載します。

零戦灰緑色考察その1で述べられている連合軍側資料でスカイの事が書かれていますが、黒須さんは表面は明灰色だが、その方向舵の塗膜を一層はぐと、我々の迷彩色調でスカイとされている色に近似の色が確認されたとあるのですが、事実でしょうか?小野さんの記事とは異なっているのですが?

ご質問について、
方向舵 の下塗りースカイについては、私が「零戦灰緑色考察その1」を書いた後に資料を入手し判明したのですがアップデイトが遅れていました。これは黒須さんにもお知らせしました。

私がHPに書いた当時、Somewhat similar to our camouflage shade known as 'sky'はこちらの同人誌にあった記述でこれが全てでした。後に、1942年4月28日にポートモレスビーの近くに落ちたV-110について書かれた報告書を入手したとことろ、上記の記述は方向舵の塗装の下から発見された色について書かれたものと分かりました。機体全体は(金属部も含め)grayで塗られているとしながら方向舵のみ、grayの下にSomewhat similar to our camouflage shade known as 'sky'が塗られているとあります。他機のものか、もしくは生産段階での変更ではないかと報告書は推定しています。

もし他の羽布部分、昇降舵とエルロンに同じ下塗りがあれば羽布独特の下地塗り(銀塗料の代用)の可能性もあるのですが、この色が他の羽布部分に塗られていたとは書いてありません。この報告書にある理由(推定)のいずれもこのスカイに似た色を日本軍機色、外部塗料と考えているのが却って興味を引きます。尚、方向舵の上塗りのグレイと下塗りのスカイは、ともにグロスとなっています。

私が一番最初に「skyに似た色」に興味を持ったのは、吉村仁さんがレプリカ誌(1989年5月号)に書いた記事を読んでからです。吉村さんも上記同人誌を読んだのではないかと思いますが、この同人誌がもう少し詳しく書いてくれれば良かったのですが。

以下、V-110について書かれた連合軍報告書からの抜粋です。

"Examination of surface finishes on the Type Zero Single Seat Fighter ZEKE"The specimens of painted components reported on below were obtained from aircraft #1575, which crashed at Otamata, near Port Moresby, New Guinea on 28 April 1942. The examination and report were handled by the British Australian Lead Manufacturers Pty. LTD, of Melbourne, Victoria. Signed: Frank T McCoy, Jr, Major, Air Corps, Material Officer.《中略》

In the case of the aircraft examined from an inspection of the dope stripped from the fabric, it can be seen that this component has apparently been refinished as the original color is somewhat similar to our camouflage shade known as "sky". The latter application being a grey. Finished coats in both cases are glossy, and the application and technique employed has obviously been designed to give as smooth a finish as possible.《中略》

The rudder has apparently been finished originally in a Sky (Pale Green)color, but this was not characteristic of the balance of the aircraft, where grey alone has been used. This might indicate that the rudder was not part of the original aircraft assembly, and had been recoated, or, alternatively, that some change in their colour programme was made during the origibnal assembly of this aircraft."

情報が増えれば、真偽を見分ける情報処理が大変なのはあたりまえですが、一方に「例外」をどう捉えるかといった問題があり、一つの見解に至るというのは益々難しく思えてきます。

 

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