零式艦戦用塗色「飴色」-再考(その2)

さらに「飴色」論争に拍車をかけているのがスケール・エフェクト。そして灰色系塗色が無彩色ゆえに写り込みや汚れ等に影響されやすい(色味が発生し易い)事実だと思われます。

以前、交通渋滞で前に来た車が私のイメージする灰緑色だったので(これが、なんと三菱のディアマンテ!)じっくり観察したことがあります。スケールエフェクトにも直接関係してくると思うのですが、自動車サイズに塗られたこの種の色(基本的には無彩色で若干の色味がある)は色味の点で非常に不安定で認識し難いと感じました。見る角度や周りの環境に影響され刻々と変化して行くのです。その時は夕方でしたが、真上の青空の写り込み、色温度の高くなりつつある太陽光線のオレンジが混ざりあってあらゆる色が見えます。車の陰の部分を見るのとハイライト部を見るのでは色が全然違うのです。この車の色を後で「灰色だった」と説明する人と「若干褐色がかっていた」あるいは「やや緑がかっていた」という人が同時に居てもおかしくないと感じました。屋内で数 cm角のSFSスタンダードカラーチップを見ているのとは訳が違いますし、まして飛行機のような大面積に塗られ野外で見た場合は印象に差が出て当然と思えました。以前書きましたように模型と実機のスケール差で色は20〜30%も明るさが違って見えるのです。仮にこの車に塗られた塗料を数 cm角のペイントチップで見たら〜見かけより随分暗い色だったのだな〜と感じる筈です。ですから、かつて塔乗員だった方が「こんな変な色の零戦はなかった」と証言されても、私は即座に「零戦は全てニュートラル・グレーだった」とは思えないのです。それに「草色」「水色」「鴬色」「青畳色」だったとの目撃者証言も多くあるのです。

もうひとつ卑近な例で恐縮ですが、私の使用しているコンピューター機器はグレーマックと呼ばれている時代のもので、モニターからキーボード、プリンター、スキャナー、外付けのドライブなどケーシングは全てグレーの樹脂で統一されています。i-Macが登場するまではごく一般的なものでした。それぞれのグレーは、なるべくマッチするように作られたものですが、良く見ればまさに問題の零戦の色の様に「褐色がかったグレー」もあれば「緑がかったグレー」や「茶っぽいグレー」等さまざまです。多少の経年変化もあるでしょうし、汚れ、製造時期、下請メーカーの違い等によって出てくる当然の差です。

「ご使用のコンピュータの色は何色ですか?」〜と聞かれて「キーボードは褐色がかったグレー」で「ドライブ本体は若干緑がかったグレー」「モニターはやや肌色がかっている」とは答える人はまずいないでしょう。特に神経質にならない限り(FSカラーチップを出して来ないかぎり?笑)皆「グレー」なのです。これが「初期灰色系零戦の色」の実態ではないでしょうか。ちなみに私のドライブの一つはカーキ色と言っても良いほどかなり暗く緑がかったグレーですが、意識して見るまでは、ただのグレーと認識しているのですから思い込みとは恐ろしいものです。

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