「真珠湾攻撃60周年」

昨日は真珠湾攻撃60周年なので、TVでハワイでの記念式典の実況中継を やっていました。番組製作者側としては9-11のテロリストアタックと関 連づけて、有事の備えと愛国を謳いたい様でしたがテロリズムという新 しい脅威を前に現実とのギャップをいささか感じてしまったのは私だけではなかったと思います。それでもハワイでの式典は例年通 り無事終了したようです。戦後は終わった〜と日本で言われて久しいです が、式典参加する生存者の数も年々少なくなり、アメリカでのこうした番組を見ても歴史の曲がり角に来たのかトーンが少しづつ変わって来ているようです。

アリゾナの船体から今でも流れ出る重油の油紋は知られており、あたかも流れ続ける血を思わせ象徴的でしたが、実は大量 の重油 がアリゾナの船槽にまだそのまま残っており(攻撃の前日に給油したため満タン)これがいづれ船体 の腐食で流れ出すと環境汚染の大惨事になるそうです。ア リゾナ・メモリアルもこうして新たな現実にに直面 している訳です。

映画「トラ・トラ・トラ」は、このコラムでも何度か書いたことがありま すが、私と同じ世代にとっては印象深い映画ではないでしょうか。最近も DVDで入手し印象を新たにしました。「飴色」論議はいまだ決着が付いて いない様ですが、この映画のレプリカ零戦の「うぐいす色」が以前とは違 う意味を持って感じられましたし、DVDに入っているオマケ、監督フライ シャーのコメントが黒沢監督解雇のいきさつ等にも触れていて大変興味深 かったです。以前から知りたかった黒沢監督が降りる前に撮影したシーン についてフライシャーの言では黒沢監督によるシーンは実際10分程 しかなく、それも最終的に使用されなかったとの事でした。但し私は近 衛公爵に扮した千田是也さんと黒沢監督があの近衛邸セットで一緒に写っている写 真を見た事があるので多少 疑問に思っています。

これは初耳だったのですが「トラトラトラ」の使われなかったシーンの一つにに海上給油のシーンがあったそうです。製 作に関わった人の証言では、北海道の岩内の港に駆逐艦と給油艦の側面だけ作って強風 の日に撮影したそうで、ラッシはまるで太平洋の真ん中で撮ったようで会心の出来だ ったとか。この駆逐艦と給油艦のセットも九州芦屋に作られたの「長門」「赤城」のセット同様、見物人が後 を断たなかったそうです。このシーン、一度見たいものですね。

また真珠湾攻撃隊指揮官の淵田中佐の自叙伝を最近日本から入手して初 めて読みましたが、映画『トラトラトトラ』にはこの本を下敷きにした部 分があり、ちょっと日本側のシーンを見ているような感じでした。淵田さんが、戦後キリスト教の牧師となり米国に在住していたのはこちらでは割 と知られていますが、この本によるとお隣の州、シアトルに在住していた 頃にこの本を書いたそうです。

映画「トラ・トラ・トラ」は公開時に見に行きましたが、映画についての予備知識 なく見に行ったため、本物そっくり(笑)の零戦が飛びかっているのか不 思議で、プラモで知っている零戦との違いを見い出そうと必死に見た記 憶があります。零戦というアイテムはもっと幼い頃に粗悪キットを作った だけでしたので、Tー6のレプリカ零戦はこの時の私をダマすには充分でし た。

この映画には、かつて海軍大佐で大和の副長も務めた祖父が連れて行ってくれた のですが、上映中、逃げ惑うアメリカ軍のシーンで手をたたいて喜こぶ 人達に(今では考えられませんが)祖父が不謹慎だとひどく腹を立てて いたのが今でも印象に残っています。開戦当時、祖父は完成間もない戦艦「大和」のレーダーで「ニイタカヤマノボレ」を受信したとある本に書いていました。映画「トラ・トラ・トラ」の公開は ほんとうの真珠湾攻撃から30年目でしたが、祖父にとって映画とは言え昨日の事のよ うに感じたのでしょう。そしてこの映画館での記憶からまた30年が経ちました。私が渡米してからもすでに20年が過ぎてしまいまし た。映画「トラトラトラ」を見た頃、真珠湾攻撃は生まれる遥か昔の事と思っていたのですが、史実から遠ざかりながらも逆に鮮明に見えて来るような気がします。年をとった分だけ時間的距離を把握しつつあるようです。

12/8


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