映画 "PEARL HARBOR"

映画「パールハーバー」公開早々見てきました。内容的には思ったとおり映画「トラ・トラ・トラ」の足元にも及ばない幼稚な映画で、書く事もあまりないのですが、気になる方も多いと思いますので以下私なりの印象です。

まず配給側の「これはラブストーリーだ」との弁明があるように「トラ・トラ・トラ」のようなドキュメンタリードラマとは全く性格が異なるので比較するのが無理かもしれません。ただしB級アクション映画ならそれも良いのですが、飛行機のシーンがふんだんにありながら(監督は飛行機ファンではないのでしょう)見ていて一向に盛り上がらないんです。なんかボーッと見てしまいました。本物の零戦を始め飛行可能な実機が出ているという一点で見る価値はありますが、内容的には見るべきものはありません。日本側の描き方がひどくて、特に作戦会議のシーンはヒドさは噴飯ものでした。日系アメリカ人俳優だけの起用ですが、これでは50年代後半に撮影された映画「戦場に架ける橋」の早川雪州を通り超して戦時中のプロパガンダ映画に登場する日本軍に逆戻りです。

監督が以前に撮った映画のリストを見て納得しましたが、こういう主題を扱うにはまったくの畑違いですね。映画「タイタニック」に触発されたと見受けられる部分が少なからずあるんですが、ジェイムス・キャメロンの「タイタニック」には少なくとも監督の主題=歴史に対する情熱を感じました。しかしこの監督はアクション以外歴史に対する興味はないようです。公開前のTV番組で「リサーチはどのように?」のインタビューに答えて、数ある真珠湾攻撃について書かれた本には一切触れずに、「映画トラトラトラはもちろんの事、ドキュメンタリーをできる限り見た。」との答えが印象的でした。古いドキュメンタリーのほとんどは戦意高揚のために作られたものが多いので、これが映画のタッチに影響してしまったのは間違いのないところでしょう。

デジタル処理を駆使した(使いすぎ?)のアクションシーンはまるでコンピュータゲームを見ている様。管理されすぎた画像は、清潔過ぎて映画「トラ・トラ・トラ」のアクションシーンのような生の迫力は感じません。考証的なアラを探したらキリがないのですが、たとえば航空機銃の火力がものすごく、スピットファイアの7.7 mmで誘曝するもののないHe-111爆撃機の操縦席部分が完全に吹き飛ぶ!。また、対地攻撃する零戦の機銃の威力はミサイル並みで、地上にあるものはすべて大爆発! 昔のSF映画"World of War"に出てきた町を焼き払う円盤の怪光線ようでした。

最後に、公開前から〜真珠湾に濃緑色に塗られた零戦が登場〜で日本のファンをガッカリさせたプレーズ・オブ・ファイムの飛行可能な零戦52型ですが、この映画のためにハンパなグレーに塗られなくて良かったですね。零戦ファンとして零戦のシーンだけは興奮しました。紛うことなきあの零戦52型のカウリングやその美しい姿態そのままに大空を舞う濃緑色の零戦52型を大画面で見て惚れ惚れしました。私もこの映画のお陰で、早くタミヤの1/32「零戦52型」を作りたくなりましたもの。

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