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映画 "ENEMY AT THE GATES"
3月16日にスタートした映画「ENEMY AT THE GATE」を見てきました。第二次次世界大戦で国民的英雄となった実在のソ連軍の狙撃兵ヴァシリ・ザァイセフを題材に描かれた映画です。独ソ戦の雌雄を分けたスターリングラードが舞台となっており、映画は1973年に書かれた同名の小説が元になっています。
映画はアメリカ映画式に全て英語で演じられています。主役ヴァシリを含めソ連側はイギリス俳優陣で固め、宿敵役ドイツのスナイパー(将校)に映画「ライト・スタッフ」でジョン・グレンを演じたアメリカ人俳優エド・ハリスが起用されています。
この映画についてのヨーロッパのサイトを読むと、ドイツとアメリカ合作とあり、ドイツでは一月ほど前に映画祭に出品されたそうです。また、ベルリンの郊外でロケが行われたこと。ドイツ映画としては記録的な予算とも書かれていました。しかしアメリカのメディアではドイツとの合作とはどこにも書かれておらず、ドイツ兵をエドハリスが演じていてドイツ軍も英語を喋る以上、別のドイツ公開版が存在するものと思われます。映画公開前には公式サイトでも情報を押さえてあるので、現時点ではハッキリわかりませんが私が見たのはアメリカ公開版でしょう。
この映画、監督以下ヨーロッパの制作スタッフが多く起用されているため、最近のアメリカ映画にありがちな浮き足立ったところがなく私は気に入りました。作品のスケールと幅は感じられなくともストーリーに欲張ったところがなく、話の的が一つに絞られているので昔の映画を見ているように見やすく懐かしささえ感じました。
プロットもちょうど50年代のハリウッド西部劇を彷彿とさせますが、この「両軍ベスト・スナイパーの対決」はソ連の歴史として記録されているそうです。しかしドイツ側にはこのスナイパーに該当する人物の資料がないことから架空のソ連のプロパガンダだと言われています。とすればコミュサーの書いたフィクションが60年後にアメリカで商業映画になったのですから「冷戦も遠くなった」との感概を禁じ得ません。
懐かしいと言えば、冒頭にナレーションとともに東部戦線のアニメーション地図(ソ連へ侵攻するドイツの領土が拡大する)が使われています。昔の戦争映画やドキュメンタリーでお馴染みの手法ですが、映画に使われるのは何振りでしょうか? 地図上のボルガ河の手前スターリングラードに画面はズーム・インして行きます。アナクロな感じを受けますが、こんなに分かりやすい導入は他にありませんね。こんなところも気に入った理由のひとつです。
ストーリーに幅がないと書きましたが、コンベンショナル、デジタル双方のスペシャル・エフェクトを駆使した戦闘シーンは、さすが2001年公開の映画だけあって迫力満点。相当にお金も掛けたそうでアクション映画ファンも存分に満喫できます。抑えた色調の絵が奇麗だったことも付け加えておきます。
登場する兵器ではCG制作のちょっと怪しいJu-87DとJu-88?(いまだに不明^^)が爆撃を行いますが、これはバック・ドロップ的な使い方なのでこれで充分でしょう。スツーカの機首のマーキングなど模型ファンならニヤリとするところ。ナイス・タッチです。面白いのはドイツ双発機の残骸が出てくるシーンがあるのですが、一見ハインケルHe111のつもりかな?と思いきや、これがドイツ機でもマイナーなSiebel(204??)の残骸で考証的にはクリアしてます。たぶんチェコ製の実機でしょう。
そして3号戦車!が登場します。本物ではなくモックアップですが、M47やM48の演じるドイツ戦車や、形の変なタイガー戦車を多く見せられた世代としては、アウトラインの正確なドイツ戦車が映画に登場するのは嬉しいです。 走る2台をデジタルで増殖させてうまく使っています。
たぶんファイバーグラス製の3号戦車のトップを何かの車両の上に乗せたものでしょう。少し前にテレビで映画撮影用に作られたM1エイブラムのプロップを解説をしているのを見ました。M-48の上にファイバーグラス製のプロップを被せたと言うことでしたが、ちょっと見破ることの出来ないくらい良くできていました。その番組中、トラックなどの撮影用車両が並ぶ背景に3号戦車が2台並んでいるの見つけて「さて、そんな映画あったかな?」と思っていたところでしたので、この映画のものに間違いないでしょう。一方、調達しやすいと思われるTー34は意外にも殆ど登場していませんでした。
ハノマグ装甲車は映画「プライベート・ライアン」にも登場してましたが、たぶんこれはチェコ製の本物でしょう。個人的感想の総括として、「プライベートライアン」は2度見る気はしませんが、これはもう一度見たいですね。
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