「パットン」
今、ジョージ・パットンのバイオグラフィー(A Genius For War)を読んでいます。言わずと知れたアメリカ陸軍の将軍。第二次世界大戦中、北アフリカからドイツ侵攻までを戦い、あの有名なアルデンヌの森の戦い(バルジの戦い)では第3軍を率いアメリカを勝利に導いたあのパットン将軍です。軍内でも問題児扱いされながら波乱の時代に偉大な功績を残した風雲児〜とでも言えるでしょうか。ほとんど神がかりの奇人〜といってもよい人物ですが紛れもなくアメリカの英雄の一人です。そのあからさまでスケールの大きい生き方、そして自分の理想に対してひた向きな姿勢には政治的な立場、人種、国籍を超えてなお心を動かすものがあります。
これも今回の戦車模型の影響で読み始めたのですが、アメリカ陸軍ものは今までむしろ敬遠していて模型もほとんど作ったことがありませんでした。それだけに新鮮で面白いです。ニチモの1/35 M4シャーマン戦車やタミヤの1/35 パットン人形Great Generals 5体入りも今回初めて買いました。^^)普段関心のある太平洋戦線の航空機とは対極に位置するサブジェクトですが、たまにはパットンやM4もイイですね。
といってもジョージ C. スコットが演じた映画「パットン」(PATTON ・1971)はコッポラのスクリーンプレイの光る一品で好きな映画でした。ジョージ C. スコットは去年亡くなってしまいましたが、キューブリック監督の映画「ドクター・ストレンジラブ」などでも印象の深い役者さんで、タカ派の軍人をやらせたらこの人の右に出る役者さんはいませんね。実は本人、戦時中は陸軍ならず海兵隊に居たそうです。
映画「パットン」は公開時には見なかったのですが、日本ではパットン鬼将軍〜戦車軍団的なプロモーションだったのでB級戦争アクション映画だと思っていました。しかし、こちらで初めて見てその内容(視点)に感心しました。当時アメリカがベトナムで痛手を負い戦争にうんざりしている「あの時代」にこういう映画を作るというのは大変勇気のいる事だと思います。映画を見る側も目が超えていなければただの右翼戦争礼賛映画として見てしまうでしょう。もちろんアカデミー賞を7つも取っていますし映画としての評価は高く、特に政治的に片寄っているとは認識されていません。ちなみに俳優ジョージ C. スコットはこの映画でアカデミー主演男優賞を受賞しましたが、本人は政治的な理由から受賞を拒否しています。映画の成功にはジョージCスコットの演技に依るところも多いと思いますが、冒頭の星条旗をバックにしたスピーチがカッコイイですね。こちらで「タカ派」と言えば、ジョージ C. スコットのダミ声の物まねも含めて引き合いに出されるほどメディアに影響を与えたのがこの映画「パットン」で、この本の著者も〜パットンと聞いて星条旗をバックにしたジョージ C. スコットをイメージしないアメリカの戦後世代はいないだろう〜とまで書いています。
この象徴的なジョージ C. スコットのダミ声ですが、本物のパットンは意外に声が高く、これは本人も結構気にしていたそうです。^^)これなどハリウッドの作り出したイメージと歴史のギャップのほんの一例でしょうか。またこの映画ではオマー・ブラッドレー将軍が大変良い役に描かれていますが、オマー・ブラッドレー本人はこの映画製作時に健在でアドバイザーとして参加しかなりの報酬を得たそうです。このことから〜ブラッドレーは第二次大戦中も戦後もパットンの功績を「鳶にあぶらげ」した〜と皮肉を言う人もいるようです。
いまでも教育をテーマにしたテレビ討論番組に年老いたパットンの娘がゲストに招かれるなど、パットン将軍について何かと話題は尽きません。またパットンの死を巡って暗殺説を説く本も幾つも書かれているようです。映画の終わりにもあやうく事故にまきこまれそうになるくだりがありましたが、パットンはその後、占領下のドイツで不審な交通事故で亡くなっています。中にはナチの黄金を強奪したため暗殺された〜という物まであるようです。これはちょっと行きすぎですが、たしかにヨーロッパの戦後処理に関して過激な立場をとったパットンが本国から危険視されたのは事実でマッカーサーの解任劇に似た状況があったのでした。
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